私達は結婚したのでもう手遅れです!
「あとは百花に連絡をして……」

そうだ。
スマホは家に忘れてきたんだった。
がっくりと肩を落とした。
やることもなく、一日過ごすなんてもったいない。
そう思っていると食材が早々と届いてくれて、仕事ができたとほっとした。
届けてもらった食材の中には小豆が入っていた。
これ!
これですよ!
落ち着く……
すりすりと小豆の袋に頬ずりをした。

「おい。キッチンにしゃがみこんで、なにやっているんだ……」

「と、と、冬悟さん!?帰ってきたんですか?早いですね!」

「ちゃんとインターホン鳴らしたぞ」

冬悟さんはメガネをとってシャツの胸ポケットに差し込んだ。

「小豆にホームシックを癒してもらってました……」

「帰りたいのか」

その声は怒っているというよりは悲しそうで、伸ばされた手が私の頭を優しくなでた。

「わかった。今から『柳屋』に行こう」

「本当ですか!?」

「ああ」

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