私達は結婚したのでもう手遅れです！
第１７話　親戚たち
車から降りると夕方の鐘の音が響いていた。
その音に私は帰ってきたのだと実感し、空を振り仰ぐと背の高い竹が風に揺れ、蜜柑色に染まった空が目に入った。
夕暮れ時のこの空気はどこか私を懐かしい気持ちにさせる。
冬悟(とうご)さんも私と同じように背の高い竹を見上げていた。

「ただいま……」

店は閉まっていて、裏の自宅部分の広い玄関の横戸をがらりと開けると煮物の匂いがした。
それは百花(ももか)が作る料理の匂いではなかったから、すぐに他の誰が食事を作っているのだとわかった。
玄関にはずらりと履物が並んでいる。
もう誰が来ているのかわかった。

「今後、この『柳屋(やなぎや)』をどうされるおつもり？」

「ヤクザに金を借りたなどと、噂になってはこの『柳屋』も終わりだ！」

「妻が矢郷(やごう)組に借りた三千万円はもう支払っている。ただ……三千万円をある方に借りているだけだ」

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