私達は結婚したのでもう手遅れです!
いつもは寡黙な父が言葉を丁寧に選び、親戚が居並ぶ中、そう答えた。

「ヤクザに金を借りたという事実がある限り、醜聞に変わりはない!」

親戚のおじさんやおばさんが大勢いた。
継母はどこにいるんだろう。
姿が見えない。

「お姉ちゃん!」

百花が台所から飛び出してきた。

「百花」

羽花(うか)ちゃん、お帰り」

衣兎(いと)おばさん……ただいま……」

父の一番下の妹の衣兎おばさんは近所に住んでいて忙しい時、店を手伝ってくれる。
若草色の着物を着た衣兎おばさんは一番上のお父さんとは一回り以上も歳が違うためか、お父さん以外の他の兄姉からは存在をほとんど無視されていた。
一番『柳屋』を手伝ってくれているのは衣兎おばさんなのに……
親戚が集まって大変だろうと思った衣兎おばさんが食事を作りに来てくれたようだった。

「あの、その方は?」

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