私達は結婚したのでもう手遅れです!
すっとメガネを冬悟さんがかけるとにっこり微笑んだ。

「羽花の夫です」

「えっ!?お、お姉ちゃん、嶋倉(しまくら)さんと結婚したの?」

「う、うん」

「私はこういった者です」

冬悟さんは衣兎おばさんにすっと名刺を渡す。

「まぁー!社長さん!建設会社の!」

あらまぁと衣兎おばさんは目を丸くしていた。
私と冬悟さんを見比べ、そして名刺を見る。
なにも言わなくても衣兎おばさんが考えてることは痛いほど伝わってくる。

「三千万円をどうやって払うつもりだ!」

「あの女はどこへ行った!」

あの女とは継母のことだろう。
父がこれ以上、責められているのを見ていられず、親戚が集まる座敷へ飛び出した。

「三千万円は肩代わりしていただいてます!だから、これ以上、みなさんのご迷惑になることはありません!」

そう言えば、静かになるだろうと思っていた。
それなのに―――

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