私達は結婚したのでもう手遅れです!
「羽花ちゃん、この大変な時にどこへ行っていたの?」

「今までなにをしていた!」

「その三千万円は誰に借りたというんだ!」

罵声と怒号が飛び交った。
歴史ある『柳屋』を潰すわけにはいかないという気持ちはわかる。
わかるけど、耳をふさぎたくなるくらい父の悪口が囁かれていた。

「まったく奥さんをしっかり捕まえておかないから」

「若い男と逃げたらしいわよ」

「子供を置いてねぇ」

「息子が修行中だっていうのに遊んでいたなんてな。気がつかない旦那も旦那だ」

真面目に仕事をしてきた父に対してひどい言いぐさだった。
百花も衣兎おばさんも青い顔をして、その言葉になにも言えずにいた。
それは私も同じで継母が男の人と逃げたと知って、あまりのショックでなにも言い返せなかった。
どうして逃げたの?
借金を作ったのは継母だったのに……それを詫びるどころか、逃げるなんて。
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