私達は結婚したのでもう手遅れです!
第2話 どら焼き何個分!?
竹林が続く長い道を足取り軽く歩いていた。
天気が良くて竹の葉の隙間から光がこぼれ、足元の影が揺れている。
子供の時はその揺れている影を踏みながら帰ってきた。
けれど、今は着物だということもあり、ゆっくり小幅で歩く。
ちょっと浮かれているせいもあって、足取りは軽い。

「デートかぁ……」

勝手に食事の誘いをデートに格上げしてしまっている。
それくらい浮かれていた。
お寺に行ってきたばかりなのに頭の中は煩悩まみれ。
私は今、お得様のお寺へのお菓子を配達した帰り道の途中だ。
お寺から『柳屋』へと続く道は両側に竹林があり、大抵この道を使う。
昔からこの道を通って、和菓子を届けていたんだよと亡くなった祖父母から聞かされていた。
『柳屋』だけでなく、道にも歴史がある。
車も通れないくらい細い道はいつも喧騒からはほど遠く静かだった。
三月の終わりに吹く風は少し強めの風で竹を揺らし、竹がぶつかりあって、竹のコツコツという乾いた音と竹の葉のサラサラという心地いい音がする。
その中に混じって鳥の鳴き声が響いていた。
いつもなら、鳥の鳴き声に『春だなぁ』なんて思うところ、今日は違っていた。
そう!
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