私達は結婚したのでもう手遅れです!
「俺と羽花が結婚したことは周囲に話を通してある。矢郷組の人間の耳にも入っただろう。矢郷組が羽花から完全に手を引いたとわかったら自由にしていい」

「はい……」

考えは読まれていたようだった。
朝食のついでにお弁当を作って、保冷バッグにいれた。
お弁当袋を冬悟さんが嬉しそうな目で見ていたのを私は見逃さなかった。
その顔は優しくて、紳士な冬悟さんの顔に近いのに違う。
『本当の彼も知らないでいい気なものね』と礼華さんは言っていたけど、私にだけ見せる優しい顔が本当の冬悟さんなんだって私は信じている。
妻ですから!
ちらっと指輪を見て、ひとり頷いた。
お弁当の残りのだし巻き卵を皿に一切れずつのせ、焼いた塩鮭を置いた。
キウイフルーツを切ってガラスの器に入れる。
煮干し出汁がしっかりきいた味噌汁と白い炊きたてのご飯。

「冬悟さん。朝食をどうぞ」

「……ありがとう」

冬悟さんが照れてる。
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