私達は結婚したのでもう手遅れです!
お母さんが生きていてくれたらよかった。
そんな答えの出ないことをずっと考えていた。
だんだん小豆が煮詰まってきて、水が減り火を弱くした。
ぶくぶくとあんが音をたて始める。
水気がとんできたら、砂糖をどっさり入れてまた煮詰めていく。
考えたいのは『柳屋』のことじゃない。
本当は冬悟さんとのこと。
混ぜているうちに答えがでるからと父が言っていたのに答えが出てこない。
それは私が答えを持っていないから。
パチンと火を止めた。
出来上がったあんこを冷ましている間に炊けたもち米を小さく丸めていく。
手には塩水をつけて、黙々と握った。

「冬悟さんは私になにを隠しているのかな」

あの紳士な姿が演技だったのには驚いたけど、どちらも冬悟さんであることには間違いない。
それに私のことを好きだと言った言葉。
あの言葉に嘘はない―――と思いたい。
そこまで疑うとキリがないというか、疑いたくないっていうか。
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