私達は結婚したのでもう手遅れです!
第21話 思い出の味
おじいちゃんをリビングに通して、ボディガードの二人にもお茶を出した。
ぼた餅をお茶菓子にして、熱い緑茶を出すと三人は黙ってぼた餅を食べ始めた。

「おいしいですか?」

おじいちゃんは私の顔をじっと見て、うなずいた。
ふふ……私のぼた餅は亡くなったおばあちゃん直伝のぼた餅よ。
あんこは甘さ控えめでいくつもいけるはず。
そう思って、おじいちゃんとボディガードの人達の前におかわり用のぼた餅を並べた。

「ぼた餅を作りすぎてしまったので、ちょうどよかったです。おかわりもありますから、遠慮しないで食べてくださいね」

「彼岸か」

「はい。そうです」

春は牡丹でぼた餅、秋は萩でおはぎ。
同じものなのに季節によって呼び名が変わる。
彼岸入りすると必ず作ってお供えしてきた。
毎年、おばあちゃんが作ってくれていたのを私が引き継いだ。
店のあんことはどこか違う。
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