私達は結婚したのでもう手遅れです!
私がふさわしいかどうか、品定めに来たと思ったのは間違いじゃなかった。
妻の勘は当たるって本当だ。
私も牛歩の歩みながら、妻として成長しているようですね……!

「もう結婚したんですから、別れませんよ!」

「別れろとは言ってないだろうが」

「そうですけど、私のことを品定めに来たんですよね?」

おじいちゃんはふっと笑った。
臨戦態勢だったけど、優しい笑みに私の緊張感が解けた。

「そうだな。初めはそのつもりだったが、ただ『柳屋』の孫娘の顔を見たかっただけなのかもしれん。久しぶりに『柳屋』のおかみを思い出したよ」

「おばあちゃんを……」

重箱に入ったおばあちゃん直伝のぼた餅を見た。

「きっとぼた餅のせいですね」

「若い時にごちそうになって以来だが、変わらない味だった」

そう言ったおじいちゃんは昔を思い出したのか、ぼた餅を懐かしそうに見ていた。

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