私達は結婚したのでもう手遅れです!
「あのっ!よかったら、ぼた餅の重箱を一つ持って行ってください」

たくさん作りすぎたけど、結果的によかったかもしれない。
おじいちゃんに思い出の味をあげることができる。

「食べきれない分は冷凍するといいですよ。電子レンジで温めれば、好きな時に食べれますから」

「ほう」

お土産にするため、重箱を風呂敷で包んだ。
ぼた餅がギッシリ入った重箱をボディガードの人に渡すとぺこりと頭を下げられた。

「冬悟さんもいないのにお引き留めしてすみませんでした」

「いや、こちらこそ、おいしいぼた餅をありがとう」

スッとおじいちゃんが立ち上がるとボディガードの人達も同じように立ち上がり、部屋の入口までささっと移動する。
その動きは機敏でドラマみたいだった。

「冬悟と結婚したのは実に残念だ」

「そうですか?口がお上手ですね」

若かったら、ワシが立候補したのにって流れかな。
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