私達は結婚したのでもう手遅れです!
「いったん、なくなった話を持ち出すんなら、組長を通して話を持ってくるのがスジってもんでしょう」

礼華さんは言葉に詰まった。
組長ってやっぱり強いんだ。
さっきまでの勢いがない。

「この場は仙崎に免じてお引き取り願います」

礼華さんはずいっと前に出た仙崎さんに気圧されて、後ろに下がった。

「ま、まあ。いいわ。どうせ離婚するでしょうから。それに冬悟の相手は普通の女じゃ務まらないわ」

「それはどうでしょうか。もう我々は足を洗った身。先々代がそうお決めになられ、まっとうに生きている」

「どこがよ。いまだに争い事には口を挟むくせに」

「日々の平穏のためです」

なんの話をしているか、わからないけど、 二人がきわどい話をしていることだけはわかった。

「私をないがしろにしておいて、このままですむと思わないことよ」

礼華さんはそう言い捨てると社長室から出ていった。
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