私達は結婚したのでもう手遅れです!
そう思いながら、メモっていると、店の方でドタバタと大きな足音がいくつも聞こえてきた。
そんな荒々しい音をたてるようなお客さんは『柳屋(やなぎや)』に訪れない。
聞きなれない音に驚き、やっていた作業の手を止めて店の方へと戻ろうとすると『きゃー!』という百花の悲鳴が聞こえた。
そして、なにかが落ちる物音も。
何事なの!?と慌てて店先に戻るとそこにはガラの悪い人達がいた。

「え?ええ!?だ、だれっ!?」

職人さん達とお父さんも工場から集まってきた。
私と同じように固まっている。
それはこの町では見かけることのないような人達。
穏やかで平和な日常とはかけ離れた姿をしている。

「や、ヤクザ?」

声を振り絞って私は言った。
どこからどうみてもヤクザにしか見えなかった。
お世辞にも上品とはいえないスーツやだらしなく着たシャツ、サングラス、目付きの悪い男の人達。
見るからに腕っぷしも強そうで迫力がある。

「柳屋さん。奥さんが作った借金をいますぐ返してもらおうか!」

「借金だと?いったいなんのことだ」

濃茶色の作務衣を着た父が険しい顔をして言った。
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