私達は結婚したのでもう手遅れです!
「まさか!あの目が大きくて色白な女の子!?男の子だったの?」

そうそう、その子だよと全員がうなずいた。
思い出話に花が咲き始めて冬悟さんが小さい声で『おい、やめろ……!』と言うのが聞こえた。
仙崎さんはなにも自分は言いませんという顔で石像のように動かないままだった。
それに比べ、竜江さんは『今でも女装すれば、女に見えるかもなー』とまた余計なことを言って冬悟さんににらみつけられていた。

「昔、君のおじいさんに頼まれてね」

めったなことじゃ笑わない父が笑った。
百花も驚いて父の顔をじっと見つめていた。

「孫にはまっとうな道を歩ませたい。嶋倉はヤクザな世界から足を洗う。もし、大人になった孫がいい男になっていたその時は羽花を嫁にやってくれねえかとおじいさんから言われた」

「じいさん……」

冬悟さんはうつむいた。

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