私達は結婚したのでもう手遅れです!
「おじいさんが去年、亡くなられたと聞いて、そろそろ君がやってくるだろうと思っていたよ」

「なぜ」

「寂しくなったからね」

冬悟さんは言葉に詰まった。
唯一の肉親だったおじいさん。
そのおじいさんを亡くし、孤独を感じないわけがない。
お父さんはそれをわかっていたのだ。
店に通う冬悟さんを知りながら、他の職人さん達が黙っていたのは私と冬悟さんの仲がいつ発展するのか見守っていたということ?
古株の職人さん達の冬悟さんを見る目が優しい。
まるで孫を見るような目だ。

「おじいさんが足を洗うと決めたのは君のためだからなぁ。いやぁー、孫ってのは目に入れても痛くないって本当だったんだな」

「そうそう。ヤクザの子と言われても泣かなかった冬悟君が一度だけ泣いたといって大騒ぎになったんだっけ」

「大親分が悲しい顔をしてたな」

「待て!俺は泣いてないからな!」

< 183 / 386 >

この作品をシェア

pagetop