私達は結婚したのでもう手遅れです!
冬悟さんの手に力がこもったのがわかった。

「ヤクザの子が羽花ちゃんと遊んでいると噂になって、遊べなくなった時だ」

「孫が泣いたからって、組長が足を洗うなんて誰も想像できなかったよな」

「長いことこのあたりを仕切っていた大親分がなあ」

職人さん達を止めようとした冬悟さんに竜江さんが追い打ちをかけた。

「冬悟さん。可愛かったんですねぇ。見たかったなー」

竜江さんがうんうんとうなずいているのを冬悟さんが威嚇してから、私に言った。

「泣いてないからな?」

「はい……」

でも、涙目くらいにはなっていたんですよね?
そう思ったけど、口には出さなかった。
冬悟さんのプライドを守るために。
私がどうして冬悟さんを見て思い出さなかったか、わかった。
冬悟さんを私は女の子だと勘違いしていたからだった。
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