私達は結婚したのでもう手遅れです!
「会った時、気が付かなくてごめんなさい」

「完全に忘れてしまったのかと思っていた」

「ちゃんと覚えてます」

女の子だと思っていましたとは言えずにそう答えた。
覚えていてくれたのかと冬悟さんが嬉しそうにしていたから、なおさら言えない。
私の指輪をはめているほうの手に冬悟さんはキスをする。

「すべて落ち着いたら、結婚式をしよう」

「はいっ!」

結婚したんだ―――と、やっと実感できた。
唇が重なった。
それは今までで一番優しいキス。
苦しみも悲しみもない。
ただそれは愛しいという気持ちがお互いに満たされた特別なキスだった。
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