私達は結婚したのでもう手遅れです!
嬉しそうな顔で走っていった。
それを滑り台の上から玄馬が見下ろしてポツリと言った。

「あいつ、馬鹿だなあ……」

「馬鹿じゃない。純粋なんだ」

「へーえ?なんだ。冬悟、あいつのこと好きなのかよ」

「そうだ」

驚いた玄馬が足を滑らせ、滑り台からザアッーと滑って降りてきた。
なにしてんだ、こいつ。
戻ってきた羽花は妹を連れてきて、俺に手を振った。
俺は手を振り返す。

「初めてできた友達だったのにな……」

「まあな」

俺と玄馬は友達ではない。
家同士が争っている。
たまたま公園で一緒になっただけで、こいつと遊んでいるわけじゃない。
近い存在であっても親しくなることはない俺達は自然に一定の距離を保ち、近づかないようにしている。

「玄馬。羽花が好きなら、今は近づくな」

「す、好きじゃねえし!近づくなって、なんでだよ!」

「ヤクザの子と遊んでいるって羽花が言われている」

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