私達は結婚したのでもう手遅れです!
「羽花ちゃんが俺達の分も弁当を作ってくれたんですよ。知りませんでした?」

―――知らなかった。
そういえば、重箱におにぎりをせっせと詰めていたな。

「料理上手だし、可愛いし、ちょっと胸は小さいですけどって、にらまないでくださいよ!」

「羽花を変な目でみるな」

「わ、わかってますって。冬悟さんは視線だけで殺しにくるからなぁ……ほんっと、こえーよ……」

「それにしても、羽花さん。遅いですね」

仙崎がドアの方を見た。

「ん?羽花ちゃんがどうかした?」

「秘書室にあるコピー機まで行ったはずなんですが」

「え?いなかったけど?俺、秘書室で明日の会議資料、受け取ってきたとこだし」

竜江は手に持っていた会議資料をバサバサと振った。
部屋の空気が重くなった。

「―――礼華か」

あいつ、羽花を連れ去ったな。
会社に出入りしている矢郷(やごう)組の人間は礼華だけ。
< 212 / 386 >

この作品をシェア

pagetop