私達は結婚したのでもう手遅れです!
力を込めると礼華はもがき、苦しそうに口を動かした。

「冬悟さん!それ以上はまずいですって!」

竜江に止められてハッとした。
手を離すと礼華が苦しそうにせき込み、床に崩れ落ちた。
その姿を見ても哀れだとは思わなかった。

「仙崎、竜江。こいつを連れて矢郷組に行くぞ」

「はい」

仙崎は部下を呼び、礼華の体をつかんだ。

「なっ、なにするのよ!離しなさいよっ!」

「今のところ危害は加えない。人質として矢郷組との取引材料にするためにな」

「あ、足を洗ったんじゃなかったの!?矢郷組と争っていいと思ってるんじゃないでしょうねっ!」

「俺は争うつもりはない。連れ去られた自分の妻を助けに行くだけだ」

なあ?そうだろう?と顔を近づけると礼華は青い顔をして震えていた。
首に赤い手の跡が残っている。

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