私達は結婚したのでもう手遅れです!
でも、こんなふうに戸惑いの声と疑惑のまなざしを向けられる覚えはないんだから。

「とりあえず、礼華さんの手前もある。痛い目みせとけって言われたしな」

パチンとナイフの音がした。
ま、まさかああああ!

「ま、待ってください!私に危害を加えたら、後悔しますよ!」

適当に脅し文句を言ってみる。
ミノムシみたいな姿じゃ、なんの迫力もなかったけど、時間を稼がなくてはと思った。
だけど―――

「うるせーガキだな。さっさとすましておこうぜ」

「後悔?どう後悔するのか教えてもらおうか」

逆効果だった。
言わなきゃよかった!
近づいてくる刃物が鈍く光っていた。
こ、怖すぎるよー!冬悟さーんっ!
もう絶体絶命―――覚悟して目を閉じた瞬間、ドンッと誰かが殴られる重たい音がした。
ナイフを持った男がぐらりと体をよろめかせて、どさりと倒れた。
苦しそうに腹を押さえて、唸っている。

「玄馬さん!」

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