私達は結婚したのでもう手遅れです!
「そんなもの覚えてどうする」

頭上から低い声がした―――その声の主を見た。
着物姿のおじいちゃんがそこにいた。

「親戚のおじいちゃん!」

ぼた餅を食べていたボディーガードの二人もいる。

「誰が親戚のおじいちゃんだ。矢郷組の組長だとそろそろ気づけ!」

「組長!?おじいちゃんが!?」

「そうだ。矢郷組の組長で玄馬と礼華の祖父でもある」

う、うそー!!

「嶋倉の孫がきたというから、なんの用かと思えば、色恋沙汰で馬鹿な真似をしてるのか」

あきれたような口調でおじいちゃんは言った。

「縄をほどいてやれ」

「助けてくれるんですか?」

「ぼた餅の礼がまだだったからな」

「おじいちゃん……」

「誰がおじいちゃんだ!」

おじいちゃんは玄馬さんや礼華さんに比べて話が分かる人のようだった。
ボディーガードの人達が縄をほどいてくれた。

「行くぞ」

< 232 / 386 >

この作品をシェア

pagetop