私達は結婚したのでもう手遅れです!
竜江と呼ばれた大学生風の男の人は札束を手にすると、笑いながらヤクザの胸ポケットに札束をぎゅっと押し込んだ。

「はい、どーぞ。受け取ってくださいねー」

「このっ!馬鹿にしやがって!」

竜江さんは振り上げられた拳をさっと避け、かるがるとかわした。

「あっぶないなー」

ヤクザが私から手を離したその隙を見逃さず、冬悟さんはひょいっと私を抱き上げた。
これはもしや、お姫様抱っこー!?
少女漫画で見たことがある……ってそうじゃない。

「冬悟さんっ!おろしてください!私、重いですから!」

「暴れないで。落ちますよ」

耳元で囁かれて、顔が赤くなった。
こんな状況でときめいている場合じゃないのにっ!
私の頭ときたら、どれだけオメデタイのよー!

「ちゃんとつかまっていてくださいね」

そう言われて悪い気はしない。
ぎゅっと冬悟さんにしがみついた。

「羽花さん」

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