私達は結婚したのでもう手遅れです!
うっとりとイチゴを食べる。
そんな幸せそうな顔をしてくれるなら、トラック一杯分のイチゴを買い占めてもいい。

「俺のも食べていいぞ」

皿に俺のケーキについていたイチゴをのせてやると羽花はキラキラとした目で俺を見た。

「冬悟さんはやっぱり大人で素敵ですね」

イチゴひとつでそんなセリフをいわれてもあまり嬉しくない。
イチゴなしのロールケーキを食べながら、俺は言った。

「羽花。お前のお願いならなんでもきいてやる。だから、接触禁止はやめろ」

「次はないですよ」

「……わかった」

俺を脅すとか、どっちがヤクザかわからない。

「私のお願いを冬悟さんはなんでもきいてくれるんですか?」

「ああ」

羽花は少し遠慮がちに言った。

「あの……冬悟さんにお願いがあるんです」

「ああ、なんでも言え」

言いづらそうなところを見ると、無理難題なお願いなのだろうか。
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