私達は結婚したのでもう手遅れです!
名前を呼ばれて、ハッとした。
もしかして触りすぎた?
そっと指を離そうとしたのを見た冬悟さんはくすりと笑って言った。

「首に手を回さないと危ないですよ」

「は、はい」

言われるがままに冬悟さんの首に手を回すと怒鳴り声が店内に響いた。

「てめぇ!横取りする気か!」

「竜江。仙崎(せんざき)。あいつの相手をしてやれ」

殴りかかられる!―――そう思った瞬間、左右から竜江さんと仙崎さんがばっと立ちふさがり、その動きをとめた。

「矢郷。三千万円、確かに支払ったぞ」

そう言い捨てると冬悟さんは私を抱えたまま、店からでた。
まさか、このまま私は冬悟さんと一緒に行くの?

「あの……冬悟さん……」

「矢郷組の目的はお金の回収と羽花(うか)さんです」

「私!?」

「気づいてませんでしたか?あの男―――矢郷組の矢郷玄馬(はるま)という男ですが、羽花さんに惚れているようです」

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