私達は結婚したのでもう手遅れです!
「う、嘘っ!」

冬悟さんは車の助手席に私の体をそっとおろしてくれた。

「羽花さんはあいつに見られていたことに気づいていましたか?」

「い、いいえ……まったく」

いつから私を見ていたのだろう。
私が店の外に出るのはお届け物をする時と買い物に出かける時くらい。
あんな目付きの鋭い男の人に会ったこともなければ、話した記憶もなかった。

「もしかして、私を手に入れるためにわざと借金を作らせたのでしょうか……」

「そうかもしれませんね」

私のせいで―――
金づかいが荒いとはいえ、借金をしてまで遊ぶような継母ではなかったと思う。
そう思いたい。
でなきゃ、憎んでしまいそうだから。
今まで必死で『柳屋』を守ってきたのに。
店はどうなってしまうのだろう。
私のせいで『柳屋』が潰れてしまったら、どうしよう。
青い顔をしていると、大きな手のひらが頭をぽんぽんと叩いてくれた。

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