私達は結婚したのでもう手遅れです!
それを無視して冬悟さんは家の中へ入っていく。

「すごいお屋敷ですね」

「おおげさだな。広いだけだ」

冗談ですよね?
嶋倉本家はドドドーンッと構える和風庭園付きのお屋敷だった。
ここは冬悟さんが生まれ育った家で、私と住んでいるマンションは別宅になるらしい。
本当はここで暮らしていたとのことだけど、邪魔が入るとかでマンションに移ったらしい。
それにしても広すぎる。
通された和室からは手入れされた松の木やつつじの木が見えた。
鹿威しの音がコーンッと鳴り響き、その立派な庭を口を開けて眺めるしかない私。
こんなの、お寺の庭も真っ青だよ……

「羽花。どうした?」

「え!?いえ、そのー……和菓子が似合う家だなって思ってました」

「そうか?」

こくこくとうなずいた。

「おい、羽花に和菓子を出せ」

そんな意味じゃないよー!
和菓子を食べたいって言うんじゃなく―――

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