私達は結婚したのでもう手遅れです!
「冬悟さん、姐さん、お持ちしました!」

お茶と茶菓子皿をのせたお盆を恭しく両手に持ち置いた。

「わあー!若鮎!」

カステラ生地にあんこと求肥を包んだ和菓子。
鮎の顔が可愛い。

「この鮎、ちょっとぬけていて、可愛いですね」

「柳屋から買ってきた」

「そ、そうなんですか……」

また私がモデルとか?
まさかね?
じっと若鮎の顔を見詰めた。

「俺は用事を済ませる。少し待っていてくれるか」

「はい!」

もちもち生地の若鮎を口にしながら、力強くうなずいた。
冬悟さんが仙崎さんと一緒に出ていって、部屋からいなくなると、竜江さんがひょこっと顔をのぞかせた。
すべて作戦通り。
私と竜江さんは親指を立てた。

「おい。約束のものはもってきてくれたか?」

周りを気にしながら、竜江さんは部屋に入る。

「もちろんです」

「そうか。こっちの首尾もバッチリだ」

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