私達は結婚したのでもう手遅れです!
どうせガキだと思って油断していたのだろう。
嶋倉は極道の世界から足を洗った。
だが、裏の商売は続けている。
商売は簡単にやめられない。
全員の身の振り方が決まるまでは世話をしてやれとじいさんが言っていたからだ。
それを矢郷組が難癖付けて『まだ嶋倉は足を洗ってない』『約束はどうした』と、頭の悪いことを言ってくる。

「矢郷の男のほうがいいんだろ?なぁ?」

血だらけの男は虫の息だ。
矢郷の若頭だったかな?
まあ、なんでもいい。
俺は誰であろうと関係ない。
こっちは素人になったんだからな。

「車を回せ」

「はい」

仙崎が恭しく返事をした。
残った竜江が自分の部下に後始末を指示して俺と一緒にホテルの部屋から出た。

「嶋倉の味方のふりをして、こっちの情報を流すなんてとんでもねえ女でしたねぇ」

「元々、信用はしてない」

「ま、そりゃそうですね」

竜江はニヤニヤ笑っていた。
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