私達は結婚したのでもう手遅れです!
もう少しだけ―――あと少しだけ待っていて欲しい。
俺は決めている。
羽花に相応しい男になってから、迎えに行くことを。
すべて綺麗に片付けてからな。
祖父が死んで、嶋倉を裏切った連中を始末してからだ。

「さて。次の案件だな」

リストアップされた名前を獲物のように俺は見る。
そして、女の名前を一人消した。

「仙崎、あの店は別の奴に任せろ」

「はい」

「竜江、次のターゲットの店に忍び込め」

「わっかりました!まかせてください!」

「裏切った連中を徹底的にやってやるぞ」

一人残さずな。
『柳屋』の灯りが消えた世界には黒い闇がどこまでも広がっていた。
今の俺の心の中のように―――その心の中に灯りがともるのはまだ先の話になる。
そして、リストの名前の最後に俺は『柳屋』の継母の名前を加えたのだった―――
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