私達は結婚したのでもう手遅れです!
さすが建設会社の社長だけあって、お金持ちで頼りになる。
その上、強くてかっこいいなんて非の打ち所がないよー!
心の中の私は乙女モード炸裂だった。
黒塗りの車の運転席に座り、冬悟さんはハンドルを握った。

「あの竜江さんと仙崎さんはいいんですか?」

「ああ。あのガラの悪い連中がいなくなるまでは『柳屋』に留まるように命じてありますから、二人のことは心配無用です」

「確かに二人ともすごく強かったですけど、冬悟さんのボディーガードですか?」

「部下です」

「そうなんですか」

ボディーガードじゃなかった。
あの二人はなんのお仕事をしているのだろう。
営業かな?
『柳屋』が遠ざかっていくのがバックミラーから見えた。
私はまだ大事なことに気づいていなかった。
今日、生まれ育った静かな町と家に別れを告げたことを―――
< 28 / 386 >

この作品をシェア

pagetop