私達は結婚したのでもう手遅れです!
「俺に冷たい」

竜江さんが畳の上でしくしくと泣き真似をしていた。
けれど、百花はそれを完全に無視していた。

「俺に優しくしてくれても……」

「私は優しいわよ?」

百花が竜江さんをぎろりとにらみつけていた。
私の周りに近寄るなと言わんばかりにガードする百花。
もしかして、私と話そうと思ってたけど、竜江さんがいて邪魔だったのかな。

「俺の扱い雑すぎるっ!俺は百花の―――」

ひゅうっと冷たい風が吹いたような気がした。
あれ?もしかして、冷房が入った?

「なに?」

「いえ……」

嶋倉の人達よりも威圧感がある百花の声に竜江さんは目をさっと逸らした。

「竜江、お前はうろちょろしてないで、お酌してこい」

柳屋の親戚に一通り挨拶をした冬悟さんが席に戻って来た。
すでに宴会状態。
親戚の人達は酒もかなり入っていて、笑い声が響いていた。

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