私達は結婚したのでもう手遅れです!
「い、いないわよ。恋人ができたらっていう前提で練習しておこうかなって」

「そうなの?」

「そうよ!」

強い口調で押しきられ、私もそれ以上は問い詰めることはできなかった。
頼れる姉をアピールできるチャンスだったのに……
敗北を知るのは何回目だろうか。
百花の恋人疑惑を払拭できないまま、ケーキ作りを初めた。
まずは材料を計る。
小麦粉を計り、卵を黄身と白身にわけた。
メレンゲが肝心って書いてあったから、ここはしっかりと泡立てていく。

「オーブン温めるわね」

百花はオーブンのスイッチをいれる。

「冬悟さんのマンションにこんな大きいオーブンがあるなんて意外ね」

「冬悟さん。ああ見えて、なんでもできるの。あと、仙崎さんも魚をさばくのすっごい上手でね。包丁の使い方なんて、それこそプロみたいなんだから!」

「へ、へぇー。それはちょっと笑えないわね。ヤクザが包丁使いうまいって……」

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