私達は結婚したのでもう手遅れです！

予想もつかない【冬悟】

仕事を終え、偶然にも矢郷組の縄張りを通りかかった。
たまたま仙崎と竜江も一緒にいたが、乱闘騒ぎに出くわすとは思ってもみなかった。
だから、これは軽い運動。

「ちょうど体が鈍ってたんで、よかったっす」

竜江は笑いながら、数人、道路に転がした。
薄いTシャツからは鈍っていたわりに鍛えられた筋肉が見えている。
仙崎のほうは夏でもキッチリスーツを着てサングラスをかけている。
派手に殴り飛ばさず、重たい拳を叩き込み、体が崩れ落ちるのを無表情で眺めていた。

「くっ……そ！冬悟め」

俺の足元で倒れてうずくまる男が毒づいた。

「は？お前、俺に礼がを言うのが先だろ？」

殴ったせいでわずかに乱れたスーツの上着を直しながら、俺はくたばった―――いや、まだ息がある玄馬(はるま)を見下ろした。

「こんな姿をお前に見られたくねえよっ……！」