私達は結婚したのでもう手遅れです!
こうして、俺達は少しずつ黒く染まっていくんだろうな。
玄馬は静かだった。
同じことを考えているに違いない。
けれど、俺はお前みたいに最後まで黒く染まれない。
左手の指に結婚指輪があった。
だから、俺は玄馬よりはマシな人間だ。
争いを好まず―――

「俺は冬悟みたいに悪くなれねえからな。そこらにケンカ売ってるからな、お前は」

「は?ふざけんなよ。誰が悪いだ。それに俺は平和主義だ」

「自覚ねえのかよ!?一番タチが悪いタイプだな。俺なんか、分家の連中が襲ってくるだろうなって程度しか考えてねえのにお前はその先まで読んでいたわけだろ?」

「ああ。お前が痛めつけられて動けなくなるところまでな」

「そこまでわかってんなら、もっと早くに助けろよ!……っ、いてて」

叫んだせいで骨に響いたらしい。
学べよ。
アホだな。
冷ややかに玄馬を眺めた。

「お前を助けたわけじゃない」

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