私達は結婚したのでもう手遅れです!
「はぁ?今、俺を助けたじゃねえか」

「矢郷のジジイに借りを作りたかっただけだ。純粋な気持ちで助けるわけないだろう?」

「き、きたねぇ」

「なんとでも言え。これでしばらくはあのジジイは俺に頭があがらないだろうからな」

俺は大事な孫を助けた恩人ってわけだ。
恩義を大事にする矢郷組長のことだ。
これで、しばらくは羽花に近寄らないだろう。
そこまでキッチリ計算済みだ。

「お前を医者に送り届け、治療までしてやる親切な嶋倉にまさか矢郷は恩も返さずにいるわけねえよな?なぁ、玄馬?」

「外道かっ……!恩返しって。先の先までしっかり見えてるじゃねえかっ」

先が見えているわけじゃない。
玄馬ならこうするだろうと予測して動いている。
それは誰に対しても同じ。

「きっちり恩は返してもらうぞ」

「ヤクザだ、お前、絶対にヤクザだろ」

「言ってろよ」

俺は一般人だと何度言えばわかるんだ。
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