私達は結婚したのでもう手遅れです!

今の二人は【冬悟】


「とうとう温泉へ……」

温泉旅館に着いた時、羽花は帽子をぎゅっとつかんで目をきらきらさせていた。
子供みたいだった。

「紅葉の季節じゃないですけど、青もみじもいいですね。初夏ってかんじがして」

青もみじの葉を一枚、旅の記念なのか、羽花はそっと手にとる。
羽花はあまり旅行したことがないのはわかっていた。
店のこともあるが、あの継母が羽花を遊ばせないように見張っていたからだ。
そのおかげで羽花に変な虫がつかずにすんだわけだが、羽花は店の手伝い以外の自由な時間はほとんどなく、学生らしいことは一切できなかった。
さらに店の手伝いを熱心にして、継母よりも店のことをわかっていたせいで継母は羽花によけい辛くあたるようになってしまった。

「温泉まんじゅうも美味しいかったです。蒸したばかりのおまんじゅうはあったかくていいですね」

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