私達は結婚したのでもう手遅れです!
仙崎がいつの間に買ってきたのか、羽花に温泉まんじゅうをひとつ渡して、二人で食べているのが見えた。
ああ見えて仙崎は甘党だ。

「新商品にどうですか」

「『柳屋』は百花がもう取り仕切っているから、私は口出ししないことにしてるんです」

妹が今は『柳屋』のため、いろいろ試行錯誤している。
気が強いタイプだから、いい女経営者になるだろう。
店から自由になった羽花。
あまり行けなかった旅行へ行けば、羽花が喜ぶのはすでに俺の中では想定済み。
俺の采配は完璧だ。

「冬悟さんはいいっすよね」

背後で竜江が恨めしい声で俺に言った。

「なんだ。お前、女とうまくいってないのか」

「いや、うまくはいってるんですけど。俺としてはもっとイチャイチャしたいんですよ!」

「なるほどな」

竜江は今まで女をはべらして、生意気な顔で笑っているような男だったが、今回の女はちょっと違うらしい。
いいことだ。

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