私達は結婚したのでもう手遅れです!
赤い顔をした羽花が顔をのぞかせた。

「どうした?大浴場は?」

「そ、その。後から二人で一緒にお風呂に入りましょうね」

照れながら、羽花は言うと恥ずかしそうに部屋をまた出ていった。
遠ざかる草履の音。

「可愛すぎる……」

温泉に来て本当によかった。
羽花と温泉を楽しみたかったのはきっと俺の方だ。
羽花が作った旅行のしおりを眺めた。
明日の予定が書いてある。
こんなふうに俺は羽花と自由に遊びたかった。
ずっと。
やっと夢が叶ったんだと思えた。
これからは温泉に限らず、今までできなかったことをする。
縛られることはなにもない。
―――俺達はもう結婚したんだからな。
< 358 / 386 >

この作品をシェア

pagetop