私達は結婚したのでもう手遅れです!
「いや。いつも翻弄されている」

「嘘だろ!?」

はぁっと竜江はスマホを抱きしめて畳の上に転がっている。
そんな竜江の姿を見る日がこようとは。
まるで父親の気持ちでその竜江の姿を眺めた。

「竜江。お前には重しがいると思っていた」

「え?重し?漬け物石みたいなやつ?」

「ふわふわしていて、どこに行くかわからない奴だったが、今は違う」

「……まあ、そうですね」

いつか嶋倉の家を出ていくだろうと俺も冬悟さんも思っていた。
止める気はなかった。
そういう男だろうと思っていたからだ。
きっと竜江自身も長くとどまるつもりはなかっただろう。

「でも、あいつは守る奴だから、俺もそれを助けたいと思ってるんですよね」

「……そうか」

竜江が付き合っているのは長い歴史を持つ和菓子屋『柳屋』の娘、柳屋百花。
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