私達は結婚したのでもう手遅れです!
羽花さんと違ってきつめの美人で、年が若いというのに今時珍しい堅実でしっかりした女性だった。
そんな彼女の夢は歴史ある『柳屋』を守っていくということらしく、それを竜江は助けたいと思っているようだった。

「いいことだ」

悔しそうな顔をしていたが、何も言い返さない。
自分でもわかっているようだった。
まっとうに生きるためには重しが必要なことくらいは。
彼女の働く姿を見て学んだのだろう。
成長した―――

「仙崎さんは何もかもお見通しってわけですか。敵わないな」

冬悟さんの左右に並ぶ俺と竜江。

「敵わないこともない。冬悟さんは竜江といる時は楽しそうだ」

冷酒を口にした。
ヤクザだと言われ、友達がいなかった冬悟さんにとって竜江は年の近い友人のようなものだ。

「それぞれ役目がありますか」

「お前が俺にはなれないようにな。俺もお前にはなれない」

竜江はですねぇと笑ってみせた。

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