私達は結婚したのでもう手遅れです!
「わかってます」

「ならいい。だから、仙崎。お前は嶋倉を出て雪可と暮らせ」

「……俺は冬悟さんの世話係ですから」

「もう非力なガキじゃねえよ」

知っている。
もう誰よりも強く、自分が敵わないことも。
けれど―――それでもそばにいたいと思うのはずっと成長を隣で見守ってきたせいだろう。

「父親よりもお前は俺の父親だった。俺には羽花がいて、家族になった。だから、お前も幸せになれよ」

「冬悟さん……」

「俺は帰る。羽花が待っているからな」

刺身の盛り合わせを食べ終えると、箸をおいた。
それ以上は注文していなかった。
そこまで、と冬悟さんは最初から決めていたようだった。

「雪可。仙崎を頼む」

「ありがとうございます」

雪可は深々と冬悟さんにお辞儀をした。
手を振り、冬悟さんは迎えに来た竜江と一緒に帰っていく。
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