私達は結婚したのでもう手遅れです!
竜江が待っていたということは冬悟さんは最初から俺にこの話をするつもりでいたことになる。
本当に敵わない。
昔から、常に自分の上を行く。
一度も世話をさせてはくれない人だ。
まったくとんでもない人の世話を先代は任せてくれたものだ。

「冬悟さん。温泉、楽しかったようですね」

雪可が機嫌のいい冬悟さんを見送って、くすりと笑った。

「ああ。楽しまれていた」

「あなたも?」

「……仕事だが、楽しかった」

「よかったわ。いつも険しい顔をしているのに今日は眉間にしわがないと思っていたのよ」

おでんの盛り合わせを置いてくれた。

「土産がある」

「温泉の?」

なにかしらと雪可は笑っていた。
紙袋をすっと差し出した。

「まあ、ありがとう」

紙袋をのぞき、それから俺を見る。

「冬悟さんに言われたから決めたわけじゃない」

「はい」

「一生、そばにいてくれるか」

「ええ」

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