私達は結婚したのでもう手遅れです!
高い値札の服を見てしまった時の気持ちに似ている……
こんな服を私が着てもいいのだろうか。

「着物もありますよ。羽花さんは着物もお似合いですからね」

「は、はい。ありがとうございます」

どうして私の服や着物がすでに用意されているのかもわからないまま、情報量の多さに圧倒され、人形のように首を縦に振ることしかできなかった。
よろよろとクローゼットルームから出ると、奥の部屋までやってきた。
この部屋はきっと寝室よね―――開けようとして手を止めた。
勇気がでない。
それなのに冬悟さんが急かすように背後から私に声をかけた。

「そちらは寝室ですね」

「そっ、そうですよねぇー!」

わざとらしい返事をして、思い切ってドアを開けた。
その瞬間、思考どころか言語が吹き飛んだ。
目の前にあるのはキングサイズのベッド。
ひとつしかない。
他の部屋はないのかな?
まさか二人の寝室?
嘘よね?
< 39 / 386 >

この作品をシェア

pagetop