私達は結婚したのでもう手遅れです!
「冬悟さん。私のどこがよかったのか、さっぱりわからなくて。その……聞いてもいいですか?」

冬悟さんは別人のような優しい表情を浮かべた。
それは今まで見せてきた顔とは少し違っていて、緊張感がないというか、穏やかな目をしていた。
そのせいか、私の心臓はいつものドーンッとくるような衝撃じゃなくて、胸が苦しくなるようなせつない気持ちがわいてきて冬悟さんを抱きしめたくなってしまった。

「優しいところです」

柔らかい表情をして笑みを浮かべていた。

「あ、ありがとうございます」

「羽花さんはどうかそのままでいてください」

「はい……」

私はこれ以上、なにも取り繕えないからそのままでいるけど、冬悟さんは?
本当の冬悟さんはどんな姿をしているのだろう。
冬悟さんが隠そうと思えば、簡単に本当の姿を隠してしまえそうな気がする。

「羽花さんにお願いがあります」

「なんでしょうか!」

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