私達は結婚したのでもう手遅れです!
どうせケンカをふっかけてきた相手を挑発してあそこまでぼこぼこにされたのだろう。
仙崎が突然、緊張感を走らせ低い声で言った。

「冬悟さん、あれ見てください」

ちらりと見えるのは一人の男。
ド派手な柄シャツにだぶっとしたズボンをはいて、サングラスをかけている。
それで隠れているつもりか。
目立ちすぎだろう。

「あの男は矢郷(やごう)組組長の息子、矢郷玄馬(はるま)では?」

時代遅れでいかにもな服装。
あの趣味が悪いとしかいいようのない服装をする奴は俺が知っている中では一人だけだ。

「うわぁ。サングラスをずらして、羽花さんのことじっーと見つめてますよ」

「最悪だな」

「……冬悟さんも同じことしてますけどね」

「は?だれが玄馬と同じだって?死に急ぎたいみたいだな?竜江?」

「いやいやいやっ!冗談、冗談ですよ。冬悟さんっ、どうします?露払いしておきますか?」

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