私達は結婚したのでもう手遅れです!
どうしてなのかわからないけど、すごく唇が心地いい。

「あ……んぅ……」

舌をなぞられただけなのにたまらず、冬悟さんの体にしがみついた。
同じ香りのせいか、境目が曖昧でもっと深くまでキスをして欲しいなんて思ってしまう。
けれど、冬悟さんは体を離した。

「これ以上は眠れなくなりますから、やめておきましょうか」

「は、はい……」

離した体から体温が逃げていく。
それが寒々しくて、どこか寂しい。

「電気を消しますね」

こくっとうなずいた。
ただ二人でベッドに眠るだけ。
ちゃんと冬悟さんは約束を守ってくれている。

「おやすみなさい」

えへっと笑うと冬悟さんも微笑んだ。
それだけなのに幸せを感じていた。
いそいそと布団の中に潜り込み、目を閉じると背後から体を抱き締められた。
こ、これっ!?
ね、眠れる?
いや、眠れないよね?
うなじに冬悟さんの唇があてられて、びくりと体が震えた。

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