私達は結婚したのでもう手遅れです!
クールな外見なのに甘いものがお好きだっていうのもギャップがあって可愛らしく感じる。

「鶯は冬悟さんがお召し上がりになるんですか?」

「そうですよ」

やっぱりそうだった。
上生菓子は見た目も美しいですけど、味もおいしいですよねっ!
同志がちゃんといた。
えへっと笑うと冬悟さんもにこりとほほ笑んだ。
これが和菓子が好きな者同士の以心伝心。
ささやかな幸せを感じつつ、箱に栗の甘露煮が入ったどら焼き、金箔をちょこんとのせた白くて丸い薯蕷饅頭、皮が香ばしい最中―――どれも甘さ控えめで小豆の味を際立たせた『柳屋』自慢の餡が入ったお菓子達。

「できましたっ!どうぞっ!」

皺もヨレもない完璧な包装。
領収書に冬悟さんの名前を書きながら、私が冬悟さんを初めて名前を呼ぶようになったきっかけを思い出して、思わず頬が緩んでしまった。

『なんとお読みする名前ですか?』
『とうご、ですよ』
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