私達は結婚したのでもう手遅れです!
「だ、だめです。そんなことされたら、眠れないですからっ」

「そんなことってどんなこと?」

えっーーー?
するりと手が胸をなでた。

「ひあ……」

唇がなぞった首筋や耳が空気に触れ、余韻が体に残る。
それ以上はしないし、ただ抱き締めているだけ。
こんなの生殺しもいいところだった。
髪に顔をうずめ、背後から抱き締められているこの状況で冬悟さんは眠れるの?
そう思って、ちらりと背後に視線をやると目を閉じて眠っていた。
う、嘘っー!
まさか、この体勢で眠ってしまうんですか?
腕から逃れることもできず、目を見開いたまま、数分。
手から伝わる体温がだんだん暖かくなってきて、体から力が抜けた。
これ以上はなにもないし、ただ抱き締められているだけ。
その腕の中は居心地は悪くない。
眠気が襲ってきて、うとうとし始め、私は気がつくと目を閉じていた。
暖かな腕の中で安心しきって深い眠りに落ちていった。
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