私達は結婚したのでもう手遅れです!
第10話 会社
嶋倉(しまくら)建設は街の中心部に巨大なビルを本社として構えていた。
こんな大きな会社とは思わず、口を開けたまま、ビルを見上げていると冬悟(とうご)さんに笑われてしまった。

「祖父の代からの会社ですから。見た目は立派ですが、歴史は『柳屋(やなぎや)』さんの足元にも及びませんよ」

『柳屋』は茶の湯文化が広まった時代、茶席で使われるお菓子を作ったことから始まった。
店を構えたのは江戸時代前まで遡る。
確かに歴史はあるけど、このビルはタワーみたいですごい。

「行きましょうか」

冬悟さんはすっと腕を差し出した。
これはもしやエスコートというものでは!?
冬悟さんは私がなれないヒールのある靴を履いているから気をつかってくれたのかもしれない。
恐る恐る差し出された腕に手を触れさせると冬悟さんはにっこりと微笑んだ。

「やっぱり冬悟さんは王子様みたいです」

「は?王子?」

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